(3)オメガ Cal.1151(バルジュー7750)

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 とかく“コストダウンが甚だしい”、“無機的で面白みが無い”と揶揄されるバルジュー7750(オメガ1151)です。
そういった指摘に間違いはありませんが、アンティーククロノと比べて全ての面で劣っているのか、というと疑問符がつきます。
 アンティークと現行品、両方を扱っていると、それぞれの長所、短所が見えてきます。一方の側からの評価だけでは、ちょっと7750が可哀相な気がします。

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 各種レバーなど、クロノの動作に関わる部品はヘアライン仕上げなどがされておらず、一見“手を抜いた”ような印象を受けますが、微調整の必要は全くなく、加工精度の高さがうかがい知れます。また、材質も硬度が高く、これまで数多くの7750を扱ってきましたが、20年近く使用されたものでも、部品が磨耗しているものはほとんどありませんでした。これは材質のほか、部品の配置や形状も関係していると思います。
 消耗しやすい部品としては、自動巻ローターのベアリングがあげられますが、ベアリング単体での脱着が出来ないため、ガタを極力詰めて再使用するか、修正不能の場合はローター一式交換となります。しかし、このベアリングのガタにしても、油が切れてもまだ動くからと使用し続け、最も負担のかかるベアリングに磨耗が集中した結果です。
 定期的に洗浄・注油を施していれば、磨耗は殆ど進行しないでしょう。

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オーバーホールでややコツのいる部分としては、”Driver cannon pinion”があります(下写真の赤丸部分)。過去の修理で、取り外しの際、ドライバー等を無造作にこじ入れ、地板に傷をつけているだけでなく、軸で繋がる2番車の芯まで曲げてしまっている跡がわかるものもあります。

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 そのような見苦しい跡を残さないよう、芯の太さに先を研磨したタガネとポンス台で、中心を正確に押し出すことで2番車と分離します。また、この歯車は取り付けにも正確さを要します。深くセットすると地板に、逆に浅いとカレンダー受けに接触し、ともに動作不良となります。
 地板の淵から0.05mmだけ下がるようにセットします。 
  欠点としては、ローターが片方向巻上げのため、巻き上げ不足となりやすく、時計を夜外して翌朝に停止してしまう、といった症状が出やすいのですが、これも機械全体の油切れによる動作不良、前述のローターベアリング磨耗が原因であることも多く、適切なオーバーホール、部品交換により解決します。部品の供給が安定しており、故障箇所さえ的確に発見できれば、部品交換と簡単な調整で機能回復できるのも、この機械の特徴です。この点だけは、アンティークが決して及ばないところです。

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このムーブメントはトリプルカレンダーのついたものですが、この部分の動作不良、部品の磨耗もほとんど発生しません。アンティークのオメガ・トリプルカレンダームーンフェイズの調整に苦労した経験のある人ならば、比較して設計・生産・加工技術の進歩がわかるというものです。

 アンティークのほうが“耐久性に優れる”といった記述をよく目にしますが、レバーや回転軸が磨耗、変形しておらず、大変状態が良い物だけを目にしている場合、そう感じるのではないでしょうか。

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