(1)オメガ Cal.321~初代スピードマスターに使用されたムーブメント

スピードマスターのファーストモデルに採用されたCal.321の全体像。

Omega Cal.321

雑誌等ではあまり見る機会の少ない文字盤の裏側(下の画像)です。中心軸の左右に弧を描いた細いバネが見えますが、手順に沿った組み方をしなかったせいか、無理に曲げて折ってしまっている個体も多く見受けられます。

オメガCal.321

Cal.321にはスタートボタンを押していないのに、12時間計だけが動き出してしまうというトラブルがあります。この場合は下写真の偏心ねじ (赤丸部分)を回し、12時間計車のロックを確実にすることにより解決します。
  Cal.321の原型となったCal.27CHRO17Pには当初12時間計はなく、後に追加された機構であることがわかります。そのせいか、駆動方法、リセット機構などにやや無理をしている感が否めません。
  現在もバセロン/パテック等の高級クロノグラフ用に生産されているレマニアCal.2310の基本構成はCal.321と同じですが、12時間計が装備されているものは少数です。
  デザイン的なこともあるのでしょうが、意外とこのあたりに理由があるのかもしれません。

オメガ321

非常に細いバネが多く使用されているのがわかりますが、これだけ細いと金属疲労、サビなどで折れてしまうことが あります。部品の入手は困難な場合は、弾性を持った鋼材から旋盤を用いて削りだして作成します。

cal321_05

 

クロノグラフは様々なレバーが連動して動作します。そのレバーを固定するため、ネジ頭との間に中間部のある、下の写真のようなネジを多用しています。横方向からの力がかかるせいか、経年変化で折れてしまうことが多いため、アンティーククロノの修理は敬遠されるようです。
 このタイプのネジを新規作成するのは、旋盤を使いこなせれば、そう困難なことではありません。

cal321_06

1950年代までに設計されたクロノグラフには偏心ネジなどを用いた調整箇所(赤丸部分)がいくつもあることがわかります。
  しかし、調整箇所が多いということは、それだけ狂いやすい、ということでもあります。細かな部品の構成が様式美を生み出していますが、”計測機器“ということを考慮した場合、改良の余地があったものと思われます。
  雑誌等でCal.321を絶賛する記事が多く、その美点については異論の無いところですが、このような違った側面があることもご理解いただきたいと思います。

cal321_07